「親の年金、月7万円なんです」
そう言ったあとに、多くの方が続けます。「この額で入れる施設なんて、ないですよね」
結論からいうと、あります。正確には、介護保険施設なら、年金の範囲に収まる可能性があります。鍵になるのは、負担限度額認定という、申請しないと適用されない仕組みです。この記事では、令和8年度の年金額と、厚生労働省が示す負担限度額の表をもとに、実際に計算してみます。
まず、親の年金額を確認してください
日本年金機構によると、**令和8年4月分からの老齢基礎年金の満額は、月額70,408円(年額844,900円)**です(昭和31年4月1日以前生まれの方)。前年度から1.9%引き上げられました。
つまり「年金7万円」は、国民年金を満額納めた人の、ちょうど標準的な額です。特別に少ないわけではありません。厚生年金がある方は、これに上乗せされます。
⚠️ 大事なのは、**「月いくら」ではなく「年間でいくら」**です。負担限度額認定の判定は年額で行われます。年金振込通知書を用意してください。
施設の費用は、3つに分かれています
ここを分けて考えないと、話が進みません。
| 費用 | 中身 | 軽くする仕組み |
|---|---|---|
| 介護サービス費 | 介護そのものの費用(1〜3割負担) | 高額介護サービス費(月額の上限) |
| 食費 | 1日3食 | 負担限度額認定 |
| 居住費 | 部屋代 | 負担限度額認定 |
| 日常生活費 | 日用品、理美容、おむつ代など | (対象外) |
厚生労働省が示す**基準費用額(日額)**は、食費1,445円・ユニット型個室2,066円・従来型個室1,231円・多床室915円です。何の軽減もなければ、食費と部屋代だけで多床室でも月に約7万円かかります。ここが下がるかどうかが、すべてです。
負担限度額認定:食費と居住費に上限がつきます
世帯全員が市町村民税非課税などの要件を満たすと、段階に応じて上限が設定されます。特別養護老人ホーム・ショートステイの場合の負担限度額(日額)は次のとおりです。
| 区分 | 食費 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | 従来型個室 | 多床室 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1段階 | 300円 | 880円 | 550円 | 380円 | 0円 |
| 第2段階 | 390円 | 880円 | 550円 | 480円 | 430円 |
| 第3段階① | 650円 | 1,370円 | 1,370円 | 880円 | 430円 |
| 第3段階② | 1,360円 | 1,370円 | 1,370円 | 880円 | 430円 |
⚠️ 介護老人保健施設・介護医療院は従来型個室の額が異なります(第1・第2段階は550円、第3段階は1,370円)。
段階を決めるのは、所得と預貯金の両方です。
- 第1段階 — 生活保護受給者等、または老齢福祉年金受給者で世帯全員市町村民税非課税(預貯金1,000万円以下/夫婦2,000万円以下)
- 第2段階 — 公的年金等の収入額+その他合計所得金額が80.9万円以下(預貯金650万円以下/夫婦1,650万円以下)
- 第3段階① — 同じく80.9万円超〜120万円以下(預貯金550万円以下/夫婦1,550万円以下)
- 第3段階② — 同じく120万円超(預貯金500万円以下/夫婦1,500万円以下)
介護サービス費にも、月の上限があります
高額介護サービス費という仕組みで、1か月の自己負担がこの額を超えると、超えた分が戻ってきます。
- 第1段階(生活保護受給者等)— 15,000円(個人)
- 第2段階 — 24,600円(世帯)/15,000円(個人)
- 第3段階 — 24,600円(世帯)
- 第4段階 — ①44,400円 ②93,000円 ③140,100円(いずれも世帯)
つまり住民税非課税の世帯なら、介護サービス費は月24,600円で頭打ちになります。
年金7万円で、実際にいくらになるのか
年額844,900円(月70,408円)の方は、**第3段階①(80.9万円超〜120万円以下)**にあたります。特別養護老人ホームの多床室に入った場合で計算します。
| 項目 | 計算 | 月額 |
|---|---|---|
| 食費 | 650円 × 30日 | 19,500円 |
| 居住費(多床室) | 430円 × 30日 | 12,900円 |
| 介護サービス費 | 高額介護サービス費の上限 | 24,600円 |
| 合計 | 約57,000円 |
年金70,408円の範囲に、収まります。
⚠️ ただしこれは目安です。実際には、これに日用品費・理美容代・おむつ代などが加わります(月に数千円〜1万数千円程度)。要介護度や施設の体制、市区町村によっても変わります。必ず、入居を検討している施設に見積もりを出してもらってください。
なお、預貯金が要件を超えている、同居のご家族に市町村民税の課税者がいる、といった場合は段階に該当せず、基準費用額のままになります。
気をつけてほしい4つのこと
① 申請しないと適用されません
負担限度額認定は、市区町村への申請が必要です。黙っていて自動で下がることはありません。ここを知らずに「高いから無理」と諦めてしまうのが、いちばんもったいないパターンです。
② 民間の施設は対象外です
対象は介護保険施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院)とショートステイです。介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の家賃・食費は下がりません。
③ 特養は原則、要介護3以上です
入居条件は特養の入居条件に、待機の実情は特養の待機期間にまとめています。申し込みは複数の施設に出しておくのが基本です。
④ 多床室が前提の計算です
個室を選ぶと、当然ながら金額は上がります。第3段階①のユニット型個室なら居住費は1日1,370円=月約41,100円で、多床室との差は月に約2万8千円です。
それでも足りないときは
生活保護があります。介護保険施設の費用は介護扶助の対象で、生活保護を受けている方は第1段階にあたります。食費300円/日、多床室の居住費0円/日、高額介護サービス費の上限は月15,000円です。
「生活保護は恥ずかしい」と感じて申請しないまま、子が自分の生活を削って負担する——これが、いちばん避けたい形です。共倒れになります。
費用が払えなくなりそうなときの選択肢は老人ホームの費用が払えなくなったら、軽減制度の全体像は介護費用の軽減制度、費用を抑えた住まいとしてはケアハウス(軽費老人ホーム)もあわせてご覧ください。
まず、どこに相談すればいいですか?
- 市区町村の介護保険担当窓口 — 負担限度額認定の申請先。段階の判定もここ
- ケアマネジャー — 申請の案内と、施設選びの相談
- 地域包括支援センター — まだ担当のケアマネジャーがいないとき
- 施設の相談員 — 見積もりを出してもらう。「負担限度額認定を受ける予定です」と伝えると、その前提の金額を出してくれます
費用の全体像は介護費用の相場、自己負担割合の決まり方は1割・2割・3割の判定にまとめています。
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出典・参考
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(老齢基礎年金の満額=昭和31年4月1日以前生まれの方で月額70,408円/令和7年度から国民年金〔基礎年金〕は1.9%の引上げ):https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」サービスにかかる利用料(基準費用額(日額)=食費1,445円・ユニット型個室2,066円・従来型個室1,231円・多床室915円/負担限度額(日額・介護老人福祉施設+短期入所生活介護)=第1段階 食費300円・ユニット型個室880円・ユニット型個室的多床室550円・従来型個室380円・多床室0円/第2段階 390円・880円・550円・480円・430円/第3段階① 650円・1,370円・1,370円・880円・430円/第3段階② 1,360円・1,370円・1,370円・880円・430円/介護老人保健施設・介護医療院は従来型個室が第1・第2段階550円、第3段階1,370円/対象者要件=第1段階は生活保護受給者等または老齢福祉年金受給者で世帯全員市町村民税非課税〔預貯金1,000万円以下・夫婦2,000万円以下〕、第2段階は公的年金等収入額+その他合計所得金額80.9万円以下〔650万円・夫婦1,650万円〕、第3段階①は80.9万円超〜120万円以下〔550万円・夫婦1,550万円〕、第3段階②は120万円超〔500万円・夫婦1,500万円〕/高額介護サービス費の月額上限=第1段階15,000円〔個人〕、第2段階24,600円〔世帯〕・15,000円〔個人〕、第3段階24,600円〔世帯〕、第4段階①44,400円②93,000円③140,100円〔いずれも世帯〕):https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
- 厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1280」(令和6年8月以降の基準費用額〔居住費〕の改定):https://www.mhlw.go.jp/content/001266890.pdf
まとめ
年金7万円でも、介護保険施設なら入れる可能性があります。鍵は負担限度額認定——世帯全員が市町村民税非課税などの要件を満たすと、食費と居住費に上限がつきます。年額844,900円(月70,408円)の方は第3段階①にあたり、特養の多床室なら食費19,500円+居住費12,900円+介護サービス費24,600円=月およそ5万7千円。年金の範囲に収まる計算です。⚠️ ただし申請しないと適用されません。黙っていて自動で下がることはなく、ここを知らずに諦めてしまうのが一番もったいない。そして民間の有料老人ホームやサ高住は対象外、特養は原則要介護3以上、この計算は多床室が前提という3点も押さえてください。足りないときは生活保護(第1段階=食費300円・多床室0円)という道もあります。**子が自分の生活を削る前に、市区町村の窓口へ。**施設探しや介護の悩みは、AIアドバイザーにも気軽にご相談ください(無料・登録不要)。