「暑くないよ」「エアコンは体に悪いから」——そう言って、真夏でも冷房をつけない親。帰省して玄関を開けた瞬間、部屋の中がむっとするほど暑い。言っても聞いてくれないし、毎日見張ることもできない。

結論からいうと、高齢の親の「暑くない」はあてになりません。そして、エアコンをつけていても安全とは限りません。この記事では、親がエアコンを使わない理由、叱らずに使ってもらう具体策、「ついているのに危ない」状態の見分け方、そして離れて暮らす場合の見守り方を整理します。

なぜ高齢の親はエアコンをつけないのですか?

「頑固だから」ではありません。理由はいくつも重なっています。

背景本人の中で起きていること
暑さを感じにくい加齢で温度を感じる力が鈍り、本当に「暑くない」と感じている
のどが渇かない渇きを感じにくく、水分が足りない状態に気づけない
もったいない電気代への不安。節約が習慣として身についている
冷房は体に悪いという考え「クーラー病になる」「風が体にさわる」という長年の信念
操作が分からないリモコンの表示が読めない、モードが変わってしまった
音・風が不快風が直接当たる、運転音が気になる
壊れている・古い冷えないまま使っている。本人は故障に気づいていない

「暑くない」は嘘ではありません。本人の感覚としては本当にそうです。だからこそ、体感ではなく数字(室温)で判断するしくみに変える必要があります。

数字で見る、家の中の熱中症

総務省消防庁の確定値では、令和7年(5〜9月)の熱中症による救急搬送は全国で100,510人にのぼり、統計を取り始めた平成20年以降で最も多い数でした。うち**65歳以上が57,433人(57.1%)**と、半数以上を高齢者が占めています。発生場所として最も多いのは「住居」です。

さらに深刻なのが死亡の内訳です。東京都監察医務院がまとめた令和7年夏の東京23区の状況では、熱中症で亡くなった193人のうち181人(93.8%)が屋内での発生でした。そしてその181人のうち、エアコンの設置があったのは149人(82.3%)。設置があった149人のうち、使用していたのは28人にとどまります。

つまり——多くの方は、エアコンがある部屋で、それを使わないまま亡くなっています。

「つけているから大丈夫」も危ない

ここは、あまり知られていない大事な点です。

東京都監察医務院と東京大学大学院医学系研究科の分析(2025年6月公表)によると、屋内で発生した熱中症死亡1,295例のうち213例(16.4%)が、「エアコンを適切に使いこなせていなかった」ために亡くなったと考えられる事例でした。内訳は次のとおりです。

  • エアコンが動いていたのに亡くなった:84例
  • 故障して使えず亡くなった:129例

具体的な状態として、次のようなものが挙げられています。

  • 暖房設定のまま運転していた
  • 送風モード・掃除モードで動いていた
  • リモコンの電池切れで操作できていなかった
  • フィルターの目詰まりで風量が落ちていた

いずれも、電源ランプは点いている状態です。電話で「エアコンつけてる?」と聞いて「つけてるよ」と返ってきても、それは安全の確認になりません。**確かめるべきは「冷たい風が出ているか」「部屋の温度が何度か」**です。

やってはいけない対応

  • 叱る・言い負かす——「危ないって言ってるでしょ」は、本人の判断を否定するだけで行動は変わりません
  • 勝手に設定して帰る——その場は下がっても、翌日には切られます。本人が納得していないためです
  • 一度言って安心する——「言ったからもう大丈夫」が最も危険です。暑さのピークは繰り返し来ます
  • 「暑い?」と聞いて判断する——感じにくくなっているのですから、本人の答えは判断材料になりません

そのまま使える声かけと工夫

正面から「つけて」と頼むより、判断の基準を本人の外側に置くのがコツです。

  • 温湿度計を置く:「暑いかどうかは、この数字で決めよう。28度を超えたらつける、でどう?」
  • 電気代の不安を消す:「夏の電気代はこっちで払うから、遠慮なくつけて」「熱中症で入院するほうがずっと高くつくよ」
  • リモコンを簡単にする:冷房に固定し、よく使う温度のボタンに印を付ける。使わないボタンはテープで隠す
  • 風が苦手な方には:風向きを上向き・自動にする、扇風機で空気を回して設定温度を上げる
  • 役割をお願いする:「孫が行くと暑がるから、その日だけでも涼しくしておいて」
  • 医師やケアマネの言葉を借りる:家族が言うより、専門職から言われたほうが素直に聞ける方は多いものです

そして——うまくいった条件を覚えておくこと。「夕方に電話すると自分でつける」「テレビの前なら気にしない」。その人に合うパターンが必ずあります。

帰省したとき、電話したときのチェック

お盆や連休で実家に行ったら、次を確かめてください。夏の帰省は、親の暮らしを点検できる貴重な機会です。

その場で見るもの

  1. 室温と湿度(温湿度計がなければ、まず1つ置いて帰る)
  2. エアコンから冷たい風が出ているか(手をかざす)
  3. モードが「冷房」になっているか(暖房・送風になっていないか)
  4. リモコンの電池、表示が読めるか
  5. フィルターの汚れ(掃除して帰る)
  6. 冷蔵庫に飲み物のストックがあるか
  7. 寝室が夜間に暑くならないか(就寝中の冷房を切っていないか)

電話で聞くこと

  • 「いま部屋、何度?」(温湿度計を置いておけば答えられます)
  • 「エアコンから冷たい風、出てる?」

環境省の熱中症警戒アラートが出た日は必ず電話する、と決めておくと抜けが減ります。アラートは環境省の熱中症予防情報サイトで確認でき、メールやアプリで受け取ることもできます。

ひとりで見守れないときは、プロに頼る

離れて暮らしていれば、毎日は確かめられません。見守りの目を増やすのが現実的な解決策です。

頼れる先できること
ケアマネジャー夏だけ訪問介護やデイサービスの回数を増やす相談。室温や体調の変化を共有できる
地域包括支援センター要介護認定がなくても相談できる、地域の窓口。見守りサービスの案内も
デイサービス通っている時間は空調の効いた場所で過ごせる。水分補給も管理される
配食サービス食事の配達が、そのまま安否確認になる

「エアコンをつけてくれない」という相談は、遠慮するようなことではありません。ケアマネジャーや地域包括支援センターに、そのまま伝えてください。使えるサービスの全体像は介護サービスの種類にまとめています。

在宅の限界を感じたら

エアコンだけの話ではないはずです。食事が偏る、薬が飲めていない、夜に転ぶ——ひとつひとつは小さくても、積み重なると在宅での生活には限界があります。

施設では、居室や共用部の温度管理が日常のケアとして組み込まれており、水分補給も職員が確認します。夏のたびに家族が電話で心配し続ける状態と比べて、「暑さで命を落とすリスク」がはっきり下がるのは現実的なメリットです。

ひとり暮らしの見極めについては高齢の親のひとり暮らし、限界のサイン、在宅の続け方は在宅介護のコツと限界の見極め方もあわせてどうぞ。お住まいの地域の施設はエリアから探すからご覧いただけます。

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出典・参考

まとめ

高齢の親がエアコンをつけないのは、頑固だからではありません。暑さを感じにくくなっている、電気代が不安、操作が分からない、そもそも壊れている——理由は必ずあります。だから、本人の体感ではなく室温という数字で決めるしくみに変えてください。温湿度計を置く、電気代は子が持つと伝える、リモコンを冷房に固定する。そして**「つけているから大丈夫」も安全ではありません**。暖房設定のまま、送風モード、電池切れ、故障——電源が入っていても冷えていない事例で人が亡くなっています。確かめるのは「冷たい風が出ているか」「いま何度か」。ひとりで見守り続けるのは無理です。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、見守りの目を増やしてください。介護の悩みや施設探しは、AIアドバイザーにも気軽に相談してください(無料・登録不要)。