朝、母の朝食を用意してから出社する。昼休みにケアマネジャーから電話が来る。夜、帰って着替えを手伝い、薬を飲ませ、洗濯機を回す。

**誰にも言っていない。**言う相手もいない。会社では「大丈夫です」と答えている。

結論からいうと、息子が親を介護するのは、もう珍しいことではありません。同居で介護をしている人の36.5%は男性です。一方で、厚生労働省の調査からは、息子の介護がひとりで抱え込まれやすく、追い詰められやすい構造も見えてきます。この記事では、それを責めるためではなく、早めに外へつなぐための材料として整理します。

息子の介護は、どのくらいありますか?

厚生労働省の2025(令和7)年 国民生活基礎調査によると、要介護者と同居している主な介護者の性別は次のとおりです。

同居の主な介護者割合
男性36.5%
女性63.5%

およそ3人に1人が男性です。要介護者からみた主な介護者の続柄でも、**「子」が18.2%**と、配偶者(22.5%)に次いで多くなっています。

「男が親の介護なんて」という目線は、もう実態と合っていません。ひとりで抱えているとしたら、それは珍しいからではなく、頼る先がまだつながっていないだけです。

どうして追い詰められやすいのですか?

ここから先は、書くのに迷った数字です。それでも載せるのは、「まだ大丈夫」と思っている人にこそ、先に知っておいてほしいからです。

厚生労働省の**令和6年度「高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果」**では、家族などの養護者による虐待について、次のように示されています。

  • 被虐待高齢者からみた虐待者の続柄は「息子」が7,119人(38.9%)で最も多く、次いで夫23.0%、娘19.3%
  • 被虐待高齢者の**54.1%が「虐待者のみと同居」**していた

⚠️ **これは「息子が悪い」という話ではありません。**数字が示しているのは、次の条件が重なった家で、事が起きやすいということです。

重なりやすい条件中身
二人きりの家介護する人と、される人しかいない。交代も、見る目もない
仕事との板挟み日中は仕事、夜と休日は介護。休む時間がない
家事に慣れていない食事・洗濯・掃除の負担が、介護そのものに上乗せされる
弱音を吐ける相手がいない職場にも友人にも言えず、ひとりで抱える
「自分がやらなければ」頼ることを負けだと感じてしまう

**誰でも、この状態が長く続けば限界を越えます。**だからこそ、まだ大丈夫なうちに外の手をつないでおくことが、あなたのためにも、親のためにもなります。

外の手は、実際に効くのですか?

効きます。同じ調査で、虐待が認められた事例のうち虐待者から分離を行った事例の対応を見ると、**最も多かったのは「契約による介護保険サービスの利用」で35.4%**でした。

つまり、事態を変えている一番の手段は、特別な措置ではなく、ふつうの介護保険サービスです。それを、追い詰められる前に使えばいい。

  • 訪問介護 — 食事の用意、掃除、洗濯などの生活援助も頼めます。家事の負担をまず外す
  • デイサービス — 日中、親が外で過ごす。仕事の時間を確保できる
  • ショートステイ — 数日単位で預けて、あなたが休む。「限界の人が使うもの」ではなく、予定に組み込むもの
  • 配食サービス — 毎日の食事の心配を減らす(高齢者向けの食事宅配)

窓口は担当のケアマネジャー、まだいなければ地域包括支援センターです。「男ひとりで回していて、もう余裕がない」とそのまま言って構いません。

仕事は、辞めなくていいですか?

辞める前に、使える制度を全部使ってください。

  • 介護休業 — 対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます
  • 介護休暇 — 年5日(対象家族が2人以上なら10日)。1日単位または時間単位で取れます
  • 残業の免除・短時間勤務などの措置

⚠️ 介護休業の93日は、自分で介護をするための期間ではなく、介護の体制をつくるための期間と考えてください。この間にケアマネジャーとサービスを組み、仕事に戻れる形を作ります。

詳しくは介護休業と介護休暇、辞めずに続けるための考え方は介護離職を避けるためににまとめています。

母親の入浴やトイレに抵抗があります

**抵抗を感じるのは自然なことです。**無理に自分でやる必要はありません。

訪問介護の身体介護、訪問入浴介護、デイサービスの入浴——介護保険には、この場面のためのサービスがあります。同性の職員を希望できる事業所もあるので、ケアマネジャーに**「異性の親なので抵抗がある」**と正直に伝えてください。理由を言わずに断ると、単なるサービス拒否として扱われてしまいます。

そして、親のほうも息子に見られたくないと感じていることがあります。身体の介助はプロに任せ、息子は通院の付き添い、お金の管理、手続き、話し相手に回る——これも立派な介護です。

危ないサインに気づいたら

次のどれかに当てはまったら、その日のうちに誰かに話してください。

  • 親に対して、声を荒らげることが増えた
  • 手を上げそうになった、あるいは上げてしまった
  • 眠れない日が2週間以上続いている
  • 「いなくなってくれたら」と考えてしまった

これは人格の問題ではなく、疲労が限界を越えたサインです。手を上げそうになったときの具体的な離れ方は親に手を上げそうになったら、眠れない・気が晴れないときは介護疲れ・介護うつへ。相談先はケアマネジャー、地域包括支援センター、かかりつけ医です。

在宅の限界を感じたら

「自分がやらなければ」は、責任感ではなく、ひとりで抱えているサインのことがあります。

二人きりの家で、仕事と介護を両方ひとりで回し続けることは、構造的に無理があります。24時間の職員体制、交代できる複数の目、家事から解放された時間——施設はそれを仕組みとして持っています。施設に預けることは、息子としての役割を降りることではありません。面会に行き、話を聞き、手続きを担う。役割が変わるだけです。

判断の目安は在宅介護のコツと限界の見極め方、罪悪感については施設に入れるのは親不孝?と感じたら、費用は介護費用の相場へ。施設探しはエリア別の施設一覧から始められます。

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出典・参考

  • 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」Ⅳ 介護の状況(同居の主な介護者の性別=男性36.5%・女性63.5%〔図25〕/要介護者等からみた主な介護者の続柄=配偶者22.5%・子18.2%・子の配偶者4.2%ほか〔図24〕):https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/dl/05.pdf
  • 厚生労働省「令和6年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」(養護者による虐待について=被虐待高齢者のうち**「虐待者のみと同居」9,446人〔54.1%〕、「虐待者及び他家族と同居」と合わせて85.7%が虐待者と同居/被虐待高齢者からみた虐待者の続柄=「息子」7,119人〔38.9%〕で最多、次いで「夫」4,216人〔23.0%〕、「娘」3,533人〔19.3%〕、「息子の配偶者(嫁)」2.2%/虐待者の年齢は50〜59歳が27.3%で最多/虐待者から分離を行った事例の対応は「契約による介護保険サービスの利用」1,642人〔35.4%〕が最多**、次いで医療機関への一時入院17.3%、やむを得ない事由等による措置16.2%):https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001658155.pdf
  • 厚生労働省「令和6年度 高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果」(公表ページ):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67817.html
  • 厚生労働省「育児・介護休業法について」(介護休業=対象家族1人につき通算93日・3回まで分割/介護休暇=年5日・対象家族2人以上は10日・時間単位で取得可/所定外労働の制限・短時間勤務等の措置):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

まとめ

息子が親を介護するのは、もう珍しくありません。同居の主な介護者の36.5%は男性です。一方で、厚生労働省の調査では、家族による虐待の虐待者で最も多いのが息子(38.9%)、被虐待者の54.1%が虐待者と二人きりで同居していました。これは息子を責める数字ではなく、二人きりの家・仕事との板挟み・家事の負担・相談相手の不在が重なると誰でも限界を越える、ということを示す数字です。そして事態を変えた一番の手段は、ふつうの介護保険サービスの利用(35.4%)でした。だから、追い詰められる前に使ってください。家事は訪問介護の生活援助と配食に、日中はデイサービスに、休息はショートステイに。仕事は、辞める前に介護休業(通算93日・3回まで分割)と介護休暇を。母親の身体の介助はプロに任せ、息子は通院とお金と手続きと話し相手に回る——それも立派な介護です。**「自分がやらなければ」は、責任感ではなく、ひとりで抱えているサインのことがあります。**施設探しや介護の悩みは、AIアドバイザーにも気軽にご相談ください(無料・登録不要)。