実家の冷蔵庫を開けたら、同じ豆腐が5個。奥に、期限が2週間前の牛乳が3本。
「また買ってきたの?」と言うと、親は決まって言います。「無かったと思ったのよ」
結論からいうと、ここで叱るのがいちばん損です。買い物をやめさせると、外出・運動・会話・自分で決めることを一度に失います。減らすべきなのは買い物ではなく、重複と、傷んだ食品のほうです。この記事では、責めずに重複を減らす方法と、冷蔵庫で先に手を打つべきことを、厚生労働省と農林水産省の情報をもとに整理します。
なぜ、同じものを何度も買うのですか?
理由はひとつではありません。重なっていることが多いです。
| 背景 | 中で起きていること |
|---|---|
| 買ったこと自体を忘れる | 記憶の問題。「買った」という出来事ごと抜ける |
| 家の在庫を思い出せない | 店にいるときに、冷蔵庫の中が浮かばない |
| 段取りが組み立てられない | 献立から逆算して必要な量を決める、ができなくなる(実行機能) |
| なくなると困るという不安 | 「切らしたら大変」が先に立つ。不足への恐れ |
| 日課としての買い物 | 買う必要より、出かけること自体が目的になっている |
国立精神・神経医療研究センターは、認知症の中核症状として記憶障害や実行機能の障害などを挙げています。
⚠️ ただし、これだけで認知症と判断はできません。大事なのは「何個買ったか」ではなく**「いつから変わったか」**です。半年前と比べてどうかを書き留めて、かかりつけ医に伝えてください。初期のサインについては認知症の初期症状にまとめています。
叱ると、何を失いますか?
買い物は、物を手に入れるだけの行為ではありません。4つが同時に入っています。
- 外に出る
- 歩く
- 店の人と言葉を交わす
- 自分で選んで、自分で決める
叱られて買い物をやめた親は、この4つをまとめて失います。家にいる時間が増え、足が弱り、人と話さなくなる。重複を止めた代わりに、もっと大きいものを削ってしまうわけです。
そしてもうひとつ。責められた出来事の内容は忘れても、責められたという感じは残りやすいといわれます。隠して買うようになると、家族が把握できなくなり、発見が遅れます。
先に手を打つのは、冷蔵庫です
買い物そのものより、冷蔵庫のほうが早く・確実に手を打てます。ここは家族が黙って整えていい範囲です。
厚生労働省は、家庭でできる食中毒予防として次を示しています。
- 冷蔵庫や冷凍庫の詰めすぎに注意しましょう。めやすは、冷蔵庫や冷凍庫の7割程度です
- 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下に維持することがめやすです
- 表示のある食品は、消費期限等を確認し、購入しましょう
**同じものが何個も入っていると、7割は簡単に超えます。**そして詰まった冷蔵庫は冷えが悪くなり、奥のものから傷みます。
そして、ここがこの記事でいちばん伝えたい点です。農林水産省は高齢の方向けに、こう書いています。
高齢になると、味覚や嗅覚などが衰えがちですので、表示されている消費期限や賞味期限を参考に庫内を整理しましょう
⚠️ **「においで判断させない」**ということです。親が「まだ大丈夫」と言うのは、嘘でも意地でもなく、本当に分からなくなっていることがあります。においの変化については親のにおいが気になったらもあわせてどうぞ。
✅ 帰省のたびにやること:においを嗅ぐのではなく、日付を見る。期限切れから順に出す。7割まで空ける。
重複を減らす、効く工夫
買い物の前に、家にあるものが見える状態を作るのが基本です。
- 出かける前に、冷蔵庫の中をスマホで撮って持たせる(いちばん効きます)
- 買うものを3つまでメモに書く。多いと本人も管理できません
- 財布の中に、買い物メモの定位置を作る
- 一緒に買い物に行く(同居・近居ならこれが最も確実)
- 離れている場合:日用品や保存のきくものは定期的に送り、生鮮品は少量ずつにしてもらう。重複しても傷みにくくなります
💡 「買わないで」ではなく「これだけ買ってきて」に変えるのがコツです。役割を取り上げず、範囲だけを決める。
食中毒は、高齢の親ほど重くなります
厚生労働省は、家庭での食中毒についてこう書いています。症状が軽かったり発症する人が1人や2人のことが多いため風邪や寝冷えなどと思われがちで、食中毒とは気づかれず重症になったり、死亡する例もあります。そして特にお子さんやお年寄りなど抵抗力の弱い方は、注意が必要ですとしています。
「お腹を壊しただけ」で済まないことがある、ということです。帰省時に下痢や嘔吐があった、食事のあとに体調を崩した——そういうときは受診を検討してください。
お金の重複も、確認してください
冷蔵庫で気づいたなら、通帳も見てください。同じ食品を何度も買う状態のときは、通販やテレビショッピングの重複も起きていることがあります。
毎月同じ日に同じ額が落ちていれば、それは定期購入です。身に覚えのない荷物が届いている場合の対処は親の契約トラブル(送りつけ商法とクーリング・オフ)に、介護にかかるお金の全体像は介護費用の相場にまとめています。
病院につなぐタイミングは?
次が重なっているなら、一度受診を検討してください。
- 数か月の間に、はっきり変わった
- 同じ話を何度もする、約束を忘れることが増えた
- 冷蔵庫以外でも変化がある(同じ服を着続ける、郵便物がたまる、家が片づかない)
- 火の消し忘れ、鍋を焦がすことが増えた
受診を嫌がるときの進め方は親が病院に行きたがらないとき、窓口は地域包括支援センターや担当のケアマネジャーです。
在宅の限界を感じたら
冷蔵庫は、離れて暮らす家族が異変に気づける数少ない場所です。逆に言えば、月に一度しか開けられないなら、その間の29日は誰も見ていないということでもあります。
食事が管理できなくなると、低栄養や食中毒、火の不始末といったリスクが一度に増えます。配食サービスや訪問介護の生活援助で支えられる段階か、それとも食事が用意される住まいに移る段階かは、早めに見極めてください。
判断の目安は高齢者の一人暮らしの限界サインと在宅介護のコツと限界の見極め方、食事の宅配は高齢者向けの食事宅配へ。施設探しはエリア別の施設一覧から始められます。
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出典・参考
- 厚生労働省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント(家庭での食中毒予防)」(ポイント1 食品の購入=表示のある食品は、消費期限等を確認し、購入しましょう/肉汁や魚等の水分が漏れないようにビニール袋等にそれぞれ分けて包む/冷蔵・冷凍等の温度管理が必要な食品の購入は買い物の最後にし、購入したら早めに帰る。ポイント2 家庭での保存=持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れる/冷蔵庫や冷凍庫の詰めすぎに注意し、めやすは7割程度/冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下に維持することがめやす/肉や魚等はビニール袋や容器に入れ他の食品に肉汁等がかからないようにする。あわせて、家庭での食中毒は風邪や寝冷えなどと思われがちで、食中毒とは気づかれず重症になったり、死亡する例もあります/特にお子さんやお年寄りなど抵抗力の弱い方は、注意が必要です):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/01_00008.html
- 農林水産省「高齢の方のための食中毒予防」(高齢になると、味覚や嗅覚などが衰えがちですので、表示されている消費期限や賞味期限を参考に庫内を整理しましょう/火を通したものを食べる・宅配食やお弁当の注意・冷蔵庫の整理):https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/elderly.html
- 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」認知症(中核症状=記憶障害・実行機能の障害など/行動・心理症状〔BPSD〕との違い):https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?%40uid=WwE9LLpYbVZTIDMI
まとめ
冷蔵庫に同じものが並び始めたら、叱らないでください。買い物には外出・運動・会話・自分で決めることの4つが入っていて、やめさせるとそれを一度に失います。減らすべきは買い物ではなく、重複と傷んだ食品です。先に手を打てるのは冷蔵庫のほうで、厚生労働省は詰めすぎない(めやすは7割)・冷蔵庫は10℃以下を示しています。そして農林水産省が書いているとおり、高齢になると味覚や嗅覚が衰えるので、においではなく消費期限・賞味期限で庫内を整理する——親の「まだ大丈夫」は、意地ではなく本当に分からなくなっているのかもしれません。重複を減らすには、出かける前に冷蔵庫を撮って持たせる、買うものは3つまで。「買わないで」ではなく「これだけ買ってきて」に変えて、役割は取り上げず範囲だけ決めてください。そして冷蔵庫で気づいたら、通帳も12か月さかのぼって確認を。施設探しや介護の悩みは、AIアドバイザーにも気軽にご相談ください(無料・登録不要)。