帰省したら、廊下に段ボールが積まれていた。開けた形跡のないものもある。
「これ、何?」と聞くと、**「いいのよ、そんなこと」**と話をそらされる。あるいは「頼んだ覚えはないんだけど」と言う。通帳を見ると、身に覚えのない引き落としが毎月続いている——。
結論からいうと、この問題は「親の性格」ではなく「手続き」で解けます。そして解く順番が決まっています。最初にやるのは説教ではなく、荷物を3つに仕分けること。とくに注文していない送りつけ商品は、2021年7月から直ちに処分でき、支払も不要です。この記事では、仕分けの仕方、それぞれの解き方、期限、そして親を責めずに事実を聞き出す順番まで整理します。
まず、荷物を3つに仕分けます
やり方がまったく違うので、ここを間違えると打つ手を失います。
| 種類 | 見分け方 | 打つ手 | 期限 |
|---|---|---|---|
| ① 注文していない(送りつけ商法) | 頼んだ覚えがない/請求書が同封されている | 直ちに処分できる。支払不要 | なし(2021年7月〜) |
| ② 家に来た・電話で契約(訪問販売・電話勧誘販売) | 業者が来訪した/電話で勧誘された | クーリング・オフ | 8日間 |
| ③ 通販・定期購入 | ネットやテレビ、チラシで自分から申し込んだ | クーリング・オフはない。返品特約を見る | 特約次第 |
① 注文していない荷物は、直ちに捨てて構いません
いちばん誤解が多いところです。「14日間は保管しないといけない」と覚えている方が多いのですが、そのルールはもうありません。
消費者庁は、令和3年7月6日施行の特定商取引法改正についてこう説明しています。改正前は注文や契約をしていないにもかかわらず、金銭を得ようとして一方的に送付された商品について、消費者は、その商品の送付があった日から起算して14日が経過するまでは、その商品を処分することはできませんでした。改正後は事業者が直ちに返還請求できなくなったため、直ちに処分することができるようになりました。
さらに、こう明記されています。
- 売買契約に基づかないで一方的に商品の送付があったとしても、それにより売買契約は成立しておらず、代金を支払う必要はありません
- 開封や処分をしても、消費者に支払義務が生じることはありません
- 誤って支払ってしまった場合は、事業者に対して、その誤って支払った金銭の返還を請求することが可能です
⚠️ ただし親が「頼んでいない」と言っているだけの可能性は残ります。電話で勧誘されて承諾していた(=電話勧誘販売)というケースは実際に多いので、**捨てる前に、請求書・納品書・電話の着信履歴を写真に撮っておいてください。**捨てる判断そのものは急がなくて大丈夫です。
② 訪問販売・電話勧誘は「8日間」
家に来た業者との契約、電話で勧誘された契約は、クーリング・オフで無条件に解約できます。
国民生活センターによると、期間は次のとおりです。
- 訪問販売(キャッチセールス、アポイントメントセールス等を含む)・電話勧誘販売・訪問購入=8日間
- 連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引(内職商法、モニター商法等)=20日間
起算日は、申込書面または契約書面のいずれか早いほうを受け取った日から起算します。契約した日ではなく書面を受け取った日です。
通知の方法は、2022年6月以降、書面(はがき可)または電磁的記録で行えます。電子メールやウェブフォーム、ファックスが利用できます。
⚠️ 期限が過ぎていても、あきらめないでください。国民生活センターは、クーリング・オフができないと事業者が言ったり、脅したりしてクーリング・オフができなかった場合には、所定の期間を過ぎてもクーリング・オフができますとしています。実家でよく見つかるのは屋根や給湯器の「点検商法」、貴金属の訪問購入です。まず相談してください。
③ 通販・定期購入には、クーリング・オフがありません
ここが落とし穴です。国民生活センターは、通信販売には、クーリング・オフ制度はありませんと明記しています。返品できるかどうかは事業者が定めた返品特約の条件次第で、特約の記載がない場合は受取日から8日以内なら返品できますが、送料は消費者負担が原則です。
国民生活センターが挙げる高齢者に多いトラブルにも、インターネット通販の定期購入・サブスクリプションが入っています。「お試し1回のつもりが継続契約だった」という形です。
💡 **通帳と請求明細を、12か月分さかのぼって見てください。**毎月同じ日に同じ額が落ちていれば、それが定期購入です。止めるには事業者への連絡が要るので、届いた箱・納品書・メールを1か所に集めるところから始めます。
なぜ、うちの親が狙われるのですか?
国民生活センターはこう説明しています。高齢者は「お金」「健康」「孤独」の3つの大きな不安を持っているといわれています。悪質業者は言葉巧みにこれらの不安をあおり、親切にして信用させ、年金や貯蓄などの大切な財産を狙っています。
数字にも出ています。2025年度の全国の消費生活相談は1,006,377件で、契約当事者の年代は70歳以上の割合が最も高く25.6%。とくに**訪問購入では70歳以上が55.9%**を占めます。
注目してほしいのは、高齢者に偏っているのが「家に来る・電話をかけてくる」形式の取引だという点です。ネットに不慣れだから騙される、という話ではありません。**一人でいる時間が長く、訪ねてくる人が少ないほど、来た人の話を聞いてしまう。**孤独が入り口になっています。
つまりこれは、見守りの問題です。
親を責めずに、事実を聞き出すには
ここで叱ると、次から隠されます。隠されると、発見が半年遅れて被害額が跳ね上がります。目的は反省させることではなく、契約の全体像を知ることです。
| 伝わりにくい | 伝わりやすい |
|---|---|
| 「なんでこんなの買ったの」 | 「これ、どこで頼んだんだっけ?一緒に確認しよう」 |
| 「騙されてるよ」 | 「同じ手口が今すごく多いらしいよ。うちにも来た?」 |
| 「もう電話に出ないで」 | 「知らない番号は私に転送するようにしておこうか」 |
| 「通帳見せて」 | 「引き落としの整理、私がやるよ。面倒でしょ」 |
| (黙って解約する) | 「解約できるか、明日一緒に電話してみよう」 |
「あなたが悪いのではなく、そういう手口がある」と言い切ってあげてください。国民生活センターも、悪質業者は親切にして信用させると書いています。親切にされて信じたことは、恥ずかしいことではありません。
どこに相談すればいいですか?
消費者ホットライン「188」(いやや!)に電話すると、お住まいの地域の消費生活センター・消費生活相談窓口につながります。契約書がなくても、期限が過ぎていても、まず相談して構いません。
あわせて、介護側の窓口にも共有してください。
- 地域包括支援センター — 高齢者の見守りの中心。消費者被害の情報も扱います
- ケアマネジャー — 訪問時に家の様子の変化に気づける立場です
- 訪問介護・デイサービス — 定期的に人の目が入ること自体が抑止になります
判断力の低下が疑われるときは
同じ話を何度もする、日付があいまい、明らかに不要なものを繰り返し買う——こうした変化が重なっているなら、契約トラブルは結果であって原因ではないかもしれません。
⚠️ 判断力が不十分な状態での契約は、制度によって取り消せる場合があります。自己判断せず、188と、必要なら弁護士・司法書士などの専門家に相談してください。
在宅の限界を感じたら
契約トラブルが起きたということは、家に誰が来ても、誰も止められない状態だということです。鍵をかけても、電話を止めても、一人暮らしである限り抜け道は残ります。
そして厳しい話ですが、遠方に住む子が見守りで防ぎきるのは、かなり難しい。月に一度帰省しても、間の29日は誰も見ていません。
**施設では、外部の人が本人に直接契約を持ちかける状況そのものが起きにくくなります。**職員の目があり、来訪者は受付を通ります。見守りの人手を増やすのが難しいなら、住まいを変えるほうが早いことがあります。
判断の目安は高齢者の一人暮らしの限界サインと在宅介護のコツと限界の見極め方、罪悪感については施設に入れるのは親不孝?と感じたらへ。施設探しはエリア別の施設一覧から始められます。
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出典・参考
- 消費者庁「身に覚えのない自分宛ての商品が届いたあなた その商品、直ちに処分できます!支払も不要です!」(令和3年7月6日施行/改正前=送付があった日から起算して14日が経過するまでは処分できなかった/改正後=一方的に送り付けられた商品は直ちに処分することができる/売買契約に基づかないで一方的に商品の送付があっても売買契約は成立しておらず代金を支払う必要はない/開封や処分をしても支払義務は生じない/誤って支払った場合は事業者に返還を請求することが可能/相談先=消費者ホットライン188):https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/amendment/2021/notice/index.html
- 独立行政法人 国民生活センター「クーリング・オフ」(訪問販売〔キャッチセールス・アポイントメントセールス等を含む〕・電話勧誘販売・訪問購入=8日間/連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引〔内職商法・モニター商法等〕=20日間/起算=申込書面または契約書面のいずれか早いほうを受け取った日/2022年6月以降は書面〔はがき可〕または電磁的記録〔電子メール・ウェブフォーム・ファックス〕で通知できる/通信販売にはクーリング・オフ制度はない・返品は特約条件または受取日から8日以内/事業者がクーリング・オフをできないと言ったり脅したりしてできなかった場合は所定の期間を過ぎてもクーリング・オフができる):https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html
- 国民生活センター「高齢者の消費者被害(テーマ別特集)」(高齢者は「お金」「健康」「孤独」の3つの大きな不安を持っているといわれ、悪質業者は言葉巧みにこれらの不安をあおり、親切にして信用させ、年金や貯蓄などの大切な財産を狙っている/高齢者に多いトラブル=電話勧誘販売〔光回線・海産物〕、家庭訪販〔太陽光発電・給湯器の点検商法〕、インターネット通販〔定期購入・サブスクリプション〕、かたり商法、訪問購入〔貴金属の買い取り〕):https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/koureisha.html
- 国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況-PIO-NETより-」(相談件数1,006,377件/契約当事者の年代は70歳以上の割合が最も高く25.6%/訪問購入では70歳以上が55.9%):https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260805_1.html
まとめ
実家に積まれた段ボールは、まず3つに仕分けるところから始めます。①注文していない送りつけ商品は、2021年7月から直ちに処分でき、支払も不要(開封しても処分しても支払義務は生じません。誤って払っていたら返還請求できます)。②訪問販売・電話勧誘は8日間のクーリング・オフ。起算は契約日ではなく書面を受け取った日で、はがきでもメールでも通知できます。妨害されて期限を過ぎた場合は、過ぎてからでもできます。③通販・定期購入にクーリング・オフはありません——ここが一番見落とされます。通帳を12か月さかのぼってください。そして親を責めないこと。叱れば次から隠され、被害は大きくなります。相談は消費者ホットライン188へ。契約書がなくても、期限が過ぎていても大丈夫です。狙われているのは親の不注意ではなく、一人でいる時間の長さです。施設探しや介護の悩みは、AIアドバイザーにも気軽にご相談ください(無料・登録不要)。