ケアマネジャーとの月1回の面談で、来月のサービスの相談をしていた。

デイサービスをもう1日増やしたい、と伝える。少し間があって、こう言われた。「これ以上は、自費になります」。

介護保険なのに、自費? いくらになるのか、どうにかならないのか——。

結論:自費を払う前に、確かめることが6つあります

在宅の介護サービスには、要介護度ごとに1か月の支給限度額があります。超えた分は全額自己負担で、しかも高額介護サービス費でも戻りません。

ただ、「自費になります」と言われたら終わり、ではありません。

  1. 何が限度額を使っているか、内訳を見る
  2. 限度額に含まれないサービスに置き換えられないか
  3. 状態が変わっているなら、区分変更の申請
  4. お住まいの市区町村が限度額を上乗せしていないか
  5. 定額制のサービスへの切り替え
  6. それでも足りないなら、在宅という形そのものを見直す時期かもしれない

支給限度額とは?いくらまで使えますか?

介護保険法第43条は、在宅のサービス(居宅サービス・地域密着型サービス)について、月ごとに介護保険から支給できる額の上限を定めています。これが「区分支給限度基準額」です。

金額ではなく単位で決まっています。

要介護度1か月の限度額費用の目安(10割)
要支援15,032単位50,320円〜57,364円
要支援210,531単位105,310円〜120,053円
要介護116,765単位167,650円〜191,121円
要介護219,705単位197,050円〜224,637円
要介護327,048単位270,480円〜308,347円
要介護430,938単位309,380円〜352,693円
要介護536,217単位362,170円〜412,873円

※単位数は堺市(2026年8月更新)、費用の目安は目黒区の案内による。1単位あたりの単価はサービスの種類と地域によって違うため、同じ単位数でも金額に幅があります。

この範囲の中で、自己負担は原則1割〜3割です(負担割合の決まり方)。

超えた分は、いくらになるのですか?

超えた部分は、10割すべてが自己負担です。

1割負担の人を例に、1単位=10円で試算します。

限度額の内側限度額を超えた部分
1単位あたりの自己負担約1円約10円
2,000単位分のサービス約2,000円約20,000円

同じサービスでも、限度額を超えたとたんに負担が10倍になります(2割負担なら5倍、3割負担なら約3.3倍)。

「デイを1日増やすだけ」のつもりが、月に数万円の差になることがある、ということです。

高額介護サービス費で、あとから戻ってきませんか?

戻りません。ここは誤解しやすいところです。

世田谷区の案内では、高額介護サービス費の対象とならないものとして、次の3つが挙げられています。

  • 福祉用具購入費と住宅改修費の自己負担分
  • 施設サービスなどの食費や居住費など、介護保険の給付対象外の利用者負担分
  • 支給限度額を超える利用者負担分

高額介護サービス費は、限度額の内側の1〜3割負担が高くなりすぎたときの払い戻しです。限度額を超えた部分は、そもそも介護保険の給付ではないため、計算に入りません。

限度額の内側の負担を軽くする制度は、介護費用を軽減する制度にまとめています。

① 何が限度額を使っているのか、内訳を見ましょう

まず、ケアマネジャーに**来月のサービス利用票(別表)**を見せてもらい、どのサービスが何単位使っているかを確認します。

見るポイントは3つです。

  • 回数の多いサービスはどれか(訪問介護・デイサービス・福祉用具貸与など)
  • ショートステイが入っていないか(泊まりは1日あたりの単位数が大きい)
  • 同じ種類のサービスでも、事業所によって単位数が違うことがある(加算の取り方が事業所ごとに違うため)

「何となく足りない」ではなく、どこを削る・どこを置き換えるの話ができるようになります。

② 限度額に含まれないサービスはありますか?

あります。目黒区は、区分支給限度額に含まれないサービスを次のように案内しています。

限度額に含まれる限度額に含まれない
訪問介護/訪問入浴介護/訪問看護/訪問リハビリ居宅療養管理指導
デイサービス/デイケア介護付き有料老人ホームなど(特定施設入居者生活介護・短期利用を除く)
福祉用具貸与グループホーム(認知症対応型共同生活介護・短期利用を除く)
ショートステイ地域密着型特定施設・地域密着型特養
定期巡回・随時対応型訪問介護看護/夜間対応型訪問介護特別養護老人ホーム
小規模多機能型居宅介護/看護小規模多機能型居宅介護介護老人保健施設
認知症対応型デイサービス介護医療院など

在宅で使えるものとして、覚えておきたいのは居宅療養管理指導です。医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士などが自宅を訪問して、療養上の管理や指導を行うサービスで、限度額の枠を使いません。たとえば口の手入れなら、歯科衛生士の訪問を限度額の外で組めます(入れ歯・口腔ケアの記事で説明しています)。

もう1つ、介護職員等処遇改善加算は、厚生労働省の通知で区分支給限度基準額の算定対象から除外されるとされています。利用料の明細に載っていても、限度額を圧迫するものではありません。

⚠️ ただし、正直に書くと、在宅の「介護そのもの」(入浴・排泄・見守りなど)を限度額の外で受けられるサービスは、ほとんどありません。右の列の多くは、住まいを移るタイプのサービスです。

③ 状態が変わっているなら、区分変更を申請できます

介護保険法第29条は、要介護認定を受けた人が、介護の必要の程度が今の区分と違うと認めるときは、市町村に区分の変更の認定を申請できると定めています。更新を待たなくても申請できます。

  • 転倒・骨折・入院などで、できないことが増えた
  • 認知症が進み、見守りが必要な時間が長くなった
  • 夜間の介助が必要になった

こうした変化があって、今のサービス量では足りなくなっているなら、区分変更を検討する場面です。

⚠️ ただし、判定は心身の状態で行われます。「サービスが足りないから」だけでは区分は上がりませんし、結果として区分が変わらない・下がることもあります。手続きの流れと注意点は区分変更と更新の違いにまとめています。

④ 市区町村が、限度額を上乗せしていることがあります

見落とされがちですが、介護保険法第43条第3項には、市町村は条例で、国の基準額を超える額をその市町村の支給限度額にできるという規定があります。

実施しているかどうかは市区町村ごとに違います。**「こちらの市では、区分支給限度基準額の上乗せはありますか」**と、市区町村の介護保険課に1本電話して確かめる価値はあります。

あわせて、介護保険とは別に、自治体が独自に行っているサービス(配食、紙おむつの支給、緊急通報装置など)がないかも聞いてみてください。限度額とは関係なく使えるものがあります。

⑤ 定額制のサービスに切り替える方法もあります

回数に応じて単位が積み上がるサービスとは別に、月単位の定額で報酬が決まるサービスがあります。

どちらも限度額の対象には含まれますが、回数を増やしても月の単位数が変わらないため、「訪問を1回増やすたびに限度額に近づく」という構造から抜けられます。

⚠️ 一方で、小規模多機能に切り替えると、それまで使っていたケアマネジャーや一部のサービスが使えなくなるなど、組み方が大きく変わります。向き不向きがあるので、各記事で確認してから相談してください。

⑥ 限度額を超えるのは、どんな状態のサインですか?

介護保険法第43条第2項は、支給限度額を、要介護状態区分に応じた標準的な利用の態様などを勘案して定めるとしています。

言いかえると、限度額を超えるというのは、その要介護度で標準的に想定されている量を超えて、在宅で介護を必要としているということです。

  • 区分変更で状態が反映されていないだけなら、③で解決する可能性があります
  • 反映されてもなお足りないなら、在宅でサービスを積み上げる形そのものが限界に近いのかもしれません

これは、家族の努力不足ではありません。制度の設計上、在宅サービスの上限に届いた、というサインです。

在宅の限界を感じたら

表の右の列を、もう一度見てください。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、介護付き有料老人ホームなどは、区分支給限度額の対象外です。

これらの施設では、介護費用は要介護度ごとに決まった額で、「今月は限度額が残っているか」を気にしてサービスを削る、という構造そのものがありません(食費・居住費などは別にかかります)。

一方で、同じ「老人ホーム」でも、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、外部の在宅サービスを使うため、限度額の対象のままです。要介護度が上がると、入居してから同じ「自費になります」に出会うことがあります。違いは介護付きと住宅型の違いで詳しく説明しています。

施設探しはエリア別の施設一覧からも始められます。

関連記事

出典・参考

  • 介護保険法(平成9年法律第123号)第29条(要介護状態区分の変更の認定=要介護認定を受けた被保険者は、介護の必要の程度が現に受けている要介護状態区分以外の区分に該当すると認めるときは、市町村に対し、要介護状態区分の変更の認定の申請をすることができる)・第43条(居宅介護サービス費等に係る支給限度額/第2項=区分支給限度基準額は、要介護状態区分に応じた標準的な利用の態様等を勘案して厚生労働大臣が定める額/第3項=市町村は、条例で定めるところにより、その額を超える額を当該市町村における区分支給限度基準額とすることができる):https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
  • 堺市「要介護度別・区分支給限度基準額」(2026年8月24日更新/要支援1=5,032単位・要支援2=10,531・要介護1=16,765・要介護2=19,705・要介護3=27,048・要介護4=30,938・要介護5=36,217単位/限度額を超えた分は全額自己負担/居宅療養管理指導・認知症対応型共同生活介護・特定施設入居者生活介護〔地域密着型を含む〕・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護は支給限度基準額の対象とならない/1単位は10円から10.7円〔サービスの種類ごとに異なる〕):https://www.city.sakai.lg.jp/kenko/fukushikaigo/kaigo/service-use/kind-cost/kaigoservice/gendokijyungaku.html
  • 目黒区「区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額)」(要介護度別の費用の目安〔例:要介護5=362,170円から412,873円〕/区分支給限度額に含まれるサービスと含まれないサービスの一覧/区分支給限度額を超えたサービス利用は全額自己負担):https://www.city.meguro.tokyo.jp/kaigohoken/kenkoufukushi/koureisha/kubunsikyugendogaku.html
  • 世田谷区「高額介護(介護予防・総合事業)サービス費」(対象とならないもの=福祉用具購入費と住宅改修費の自己負担分/施設サービスなどの食費や居住〔滞在〕費など介護保険の給付対象外の利用者負担分/支給限度額を超える利用者負担分):https://www.city.setagaya.lg.jp/02061/online_tetsuzuki/2236.html
  • 厚生労働省 老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年3月13日 老発0313第6号/処遇改善加算は、区分支給限度基準額の算定対象から除外される):https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001675724.pdf
  • 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」(改定率+2.03%・処遇改善と食費の基準費用額の引上げが中心の期中改定。区分支給限度基準額の単位数は上記の堺市2026年8月更新の案内で現行値を確認):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00073.html

まとめ

  • 在宅の介護サービスには要介護度ごとの月の支給限度額があり、超えた分は10割負担
  • 1割負担の人なら、限度額を超えた部分は負担が10倍になる
  • 超えた分は高額介護サービス費でも戻らない
  • 自費を払う前に:①内訳を見る ②限度額の外のサービス(居宅療養管理指導など)③区分変更の申請 ④市区町村の上乗せを確認 ⑤定額制サービスへの切り替え
  • それでも足りないなら、在宅サービスの上限に届いたサイン。特養・老健・グループホーム・介護付き有料老人ホームは限度額の対象外