入院して2週間。まだ自分では歩けないし、トイレも一人では無理。

それなのに、看護師さんから言われます。「そろそろ退院の話を……」

「まだ治ってないのに」と思う一方で、「うちでは見られない」とも言えない。この数日で、答えを出さないといけない。

結論からいうと、退院が早いのは病院の意地悪ではなく、制度上そうなっています。そしてあわてて「家で見ます」と即答しないことが、いちばん大事です。この記事では、動く順番を整理します。

なぜ、まだ治っていないのに退院なのですか?

厚生労働省の2024(令和6)年 医療施設調査・病院報告によると、一般病床の平均在院日数は15.5日(前年から0.2日短縮)です。

病床の種類平均在院日数(2024年)
一般病床15.5日
病院全体25.6日
療養病床117.4日
精神病床255.0日

急性期の一般病床は、症状が急な時期の治療に集中する病床として運営されていて、状態が落ち着いたら次の場所へ移る前提で設計されています。「治りきってから帰る」のではなく「治療の山を越えたら次へ移る」わけです。

⚠️ つまり、見放されたわけではありません。ただし次の行き先を決めるのは家族です。ここを病院任せにすると、話が勝手に「在宅」で進みます。

最初に会うべき人がいます

主治医ではありません。病院の退院支援の窓口です。

多くの病院には入退院支援を担当する部門があります。厚生労働省の診療報酬(入退院支援加算)では、その部門に入退院支援や地域連携の経験を持つ専従の看護師または社会福祉士を配置することが要件とされています。

呼び名は病院によって違います。

  • 地域医療連携室
  • 医療相談室
  • 患者支援センター
  • 入退院支援センター

ここに**医療ソーシャルワーカー(MSW)**がいます。相談は無料です。

💡 主治医に言いにくいことも、ここでなら言えます。「家では見られない」「お金が心配」「きょうだいと揉めている」——全部、この人たちが日常的に扱っている相談です。退院の話が出たら、その日のうちに面談を申し込んでください。

退院後の行き先には、選択肢があります

「自宅か、施設か」の二択ではありません。

行き先どんなとき
自宅+介護保険サービス手すりや介護ベッド、訪問介護・訪問看護・デイで回せる見込みがあるとき
地域包括ケア病棟・回復期リハビリ病棟もう少し入院してリハビリを続けたいとき。病院の中で移ることもある
介護老人保健施設(老健)在宅復帰を目指してリハビリする中間施設。医師が常勤
介護付き有料老人ホーム・サ高住自宅に戻るのが難しく、24時間の介護体制が要るとき
特別養護老人ホーム要介護3以上。ただし待機期間が長いことがある

地域包括ケア病棟は、急性期を過ぎた人が在宅復帰を目指す病棟で、厚生労働省の資料では在宅復帰率7割以上、専任の在宅復帰支援担当者1人以上などが要件とされています。⚠️ 新設時(平成26年度診療報酬改定)には入院料の算定は60日までと定められていました。現在の運用は病院に直接確認してください。

入院中に、やっておくこと

退院してからでは遅いものがあります。

① 介護保険の要介護認定を申請する

**入院中でも申請できます。**本人が入院していても、家族が市区町村の窓口や地域包括支援センターで手続きできます。

⚠️ 認定には通常1か月ほどかかります。退院を待ってから申請すると、退院後にサービスが使えない空白期間が生まれます。急ぐ場合は、認定結果が出る前から暫定のケアプランでサービスを使い始める方法もあります。申請の流れは要介護認定の申請へ。

② ケアマネジャーを決める

退院後に在宅で過ごすなら、ケアマネジャーが必要です。病院の相談員が地域のケアマネを紹介してくれることもあります。

③ 退院前カンファレンスに出る

主治医・看護師・MSW・ケアマネ・家族が集まって、退院後の体制を決める場です。**声がかからなければ、こちらから「参加したい」と言ってください。**ここで決まったことが、そのまま退院後の生活になります。

④ 家の環境を確認する

段差、手すり、トイレまでの距離、ベッドの置き場所。福祉用具のレンタルや住宅改修(上限20万円)は着工前の申請が必要なので、入院中に動き始めるのが理想です。

「家では見られません」と言っていいですか?

**言って構いません。**むしろ、はっきり伝えるべきです。

「何とかします」と答えると、在宅前提で話が進みます。そして一度その前提で動き始めると、覆すのに時間がかかります。

伝え方のコツは、気持ちではなく事実で言うことです。

伝わりにくい伝わりやすい
「うちでは無理です」「日中は仕事で、家に誰もいません」
「自信がありません」「夜間に2回以上の介助が要るなら、私の体力では続きません」
「家が古くて……」「玄関に3段の段差があり、トイレまで手すりがありません」
「お金がなくて」「親の年金は月◯万円です。この範囲で探したい」

**条件を具体的に出すほど、相手は代替案を出しやすくなります。**病院側も、行き先が決まらないまま退院させることは望んでいません。

お金の見通しも、入院中に

退院後の費用は、行き先で大きく変わります。

**MSWに「この予算で入れるところはありますか」と、金額を出して聞いてください。**地域の相場と空き状況を知っている人たちです。

在宅の限界を感じたら

退院の場面は、在宅で続けられるかどうかを、否応なく突きつけられる瞬間です。

ここで無理をして在宅を選ぶと、数か月後にもっと厳しい形で限界が来ます。逆に、この時期は施設を探すのにいちばん動きやすいタイミングでもあります。病院の相談員という専門職が味方についていて、医療情報もそろっているからです。

判断の目安は在宅介護のコツと限界の見極め方、罪悪感については施設に入れるのは親不孝?と感じたら、入居までの流れは施設入居までの流れへ。施設探しはエリア別の施設一覧から始められます。

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出典・参考

  • 厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(病院の平均在院日数は25.6日で前年に比べ0.7日短縮/病床の種類別では一般病床15.5日〔前年比0.2日短縮〕・療養病床117.4日〔同2.2日短縮〕・精神病床255.0日〔同8.2日短縮〕/病床利用率は病院77.0%・一般病床73.3%):https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/24/dl/11gaikyou06.pdf
  • 厚生労働省 地方厚生局「入退院支援加算(A246)施設基準」(当該保険医療機関内に入退院支援部門が設置されていること/入退院支援及び地域連携業務を担う部門に、当該業務に専従する看護師または社会福祉士を配置すること等):https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/chugokushikoku/news/2012/tazaitoyo/000195007.pdf
  • 厚生労働省「地域包括ケア病棟のイメージと要件」「個別改定項目について(平成26年度診療報酬改定)」(地域包括ケア病棟の役割=急性期からの受け入れ・在宅・生活復帰支援・緊急時の受け入れ/地域包括ケア病棟入院料は60日まで〔新設時〕/在宅復帰率7割以上/専任の在宅復帰支援担当者1人以上/専従の理学療法士・作業療法士または言語聴覚士1人以上):https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000039380.pdf

まとめ

「まだ治っていないのに退院」と言われるのは、病院の都合が悪いからではなく、一般病床の平均在院日数が15.5日(2024年)という前提で医療が組まれているからです。見放されたわけではありません。ただし行き先を決めるのは家族なので、「何とかします」と即答しないでください。やることは4つ。①病院の退院支援の窓口(地域医療連携室・医療相談室)に、その日のうちに面談を申し込む(相談は無料。専従の看護師か社会福祉士がいます)②介護保険の要介護認定を入院中に申請する(認定に約1か月。待つとサービスの空白期間ができます)③退院前カンファレンスに出る(声がかからなければ「参加したい」と言う)④家の段差と手すりを確認する(住宅改修は着工前申請)。そして「家では見られない」は事実で伝える——「日中は仕事で誰もいません」「夜2回の介助は続きません」。条件を具体的に出すほど、相手は代替案を出せます。施設探しや介護の悩みは、AIアドバイザーにも気軽にご相談ください(無料・登録不要)。