「胃ろうになったら、今の施設は出ないといけないと言われた」「たんの吸引が必要になったとたん、どこも受け入れてくれない」——親に医療的ケアが必要になったとき、多くの家族がこの壁にぶつかります。結論からいうと、医療的ケアが必要でも入れる施設はありますが、対応できるケアは施設によって大きく異なります。カギは、施設の看護体制と、たん吸引などを介護職員が行える喀痰吸引等制度の登録の有無。この記事で、なぜ対応が分かれるのか、どう探せばいいのかを整理します。
そもそも「医療的ケア」とは?
介護の現場で「医療的ケア」と呼ばれるのは、たとえば次のようなものです。
- たんの吸引(口の中・鼻の中・気管カニューレの内部)
- 経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻胃管からの栄養注入)
- **在宅酸素療法(HOT)**の管理
- インスリン注射・血糖測定
- たんの吸引を伴う人工呼吸器の管理
- **じょくそう(床ずれ)**の処置、カテーテルの管理 など
これらの多くは医療行為にあたり、原則として医師や看護師が行います。だからこそ、看護師がいない・少ない施設では対応が難しく、「受け入れられない」ということが起きるのです。
なぜ施設によって対応が分かれるの?
同じ種類の施設でも、医療的ケアの対応範囲は施設ごとに違います。理由は主に3つです。
- 看護師の配置:看護師が何人いるか。日中だけか、夜間・24時間もいるか。夜間に対応が必要なケアは、夜間看護のない施設では難しいことがあります
- 喀痰吸引等の事業者登録:たん吸引や経管栄養を介護職員が行うには、施設が登録事業者である必要があります(後述)
- 協力医療機関との連携:急変時に対応してくれる協力病院・在宅医との連携体制
つまり、「介護付き有料老人ホームだから安心」ではなく、その施設が、親に必要なケアを、必要な時間帯に対応できるかを、一つひとつ確認する必要があるのです。
たん吸引・経管栄養を介護職員が行える「喀痰吸引等制度」
以前は、たん吸引や経管栄養は医師・看護師しか行えませんでした。しかし看護師が常にそばにいるとは限らず、現場では対応が追いつかない場面もありました。
そこで2012年に施行されたのが喀痰吸引等制度です(社会福祉士及び介護福祉士法にもとづく制度。厚生労働省)。この制度により、**都道府県の研修を修了して認定された介護職員(認定特定行為業務従事者)**が、登録喀痰吸引等事業者として登録された施設で、医師の指示や看護師との連携のもと、次の行為を行えるようになりました。
- たんの吸引:口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部
- 経管栄養:胃ろう・腸ろう・経鼻胃管
ポイントは、すべての介護職員ができるわけではないこと。研修・認定を受けた職員が、**登録された事業者(施設)のもとで行う、という条件つきです。施設に「たん吸引に対応していますか?」と聞くときは、「喀痰吸引等の登録事業者ですか」「対応できる職員はいますか」**まで確認すると確実です。
医療的ケアに比較的強い施設の種類
種類だけで決めつけるのは禁物ですが、傾向として医療的ケアに対応しやすい施設は次のとおりです。
| 施設の種類 | 医療対応の傾向 |
|---|---|
| 介護医療院 | 医療機能を備えた施設。医療的ケアが必要な方の長期療養向き |
| 介護老人保健施設(老健) | 医師常勤・看護配置あり。リハビリ+医療対応の中間施設 |
| 介護付き有料老人ホーム | 施設差が大きい。看護体制が手厚いところなら対応可のことも |
| 看護小規模多機能型居宅介護の関連(看多機) | 訪問看護と組み合わせ、在宅で医療的ケアを支える |
一方、特別養護老人ホーム(特養)は施設によって差が大きく、夜間の看護体制がないところでは、夜間の医療的ケアが必要な方の受け入れが難しい場合があります。「うちの親のケアに対応できますか」を、必ず個別に確認しましょう。施設の種類全体は老人ホームの種類一覧も参考にどうぞ。
施設に確認したいチェックポイント
見学・相談のとき、次の点を具体的に伝えて確認しましょう。「医療対応できますか?」だけでは曖昧です。
- 必要なケアを具体的に:「胃ろうからの栄養注入が1日3回」「日中4回のたん吸引」など、種類・回数・時間帯を正確に
- 看護師の配置:人数、勤務時間、夜間・休日の対応はどうか
- 喀痰吸引等の登録:登録事業者か、対応できる職員がいるか
- 急変時の体制:協力医療機関、夜間の連絡・搬送の流れ
- 状態が変わったとき:今後さらに医療的ケアが増えたら、住み続けられるか(退去要件の確認)
特に最後の「退去要件」は重要です。入居後に状態が変わって「対応できないので退去を」となるのは、家族にとって大きな負担。将来の変化まで見据えて確認しておくと安心です。
ひとりで探そうとしないで
医療的ケアが必要な施設さがしは、条件が細かく、家族だけで探すのは大変です。次の窓口を頼りましょう。
- 病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)・退院支援看護師:入院中なら、退院後の受け入れ先探しを相談できます
- ケアマネジャー:在宅の場合、医療的ケアに対応できる施設やサービスの情報を持っています
- 地域包括支援センター:どこに相談していいか分からないときの最初の窓口
医療的ケアが必要でも、あきらめる必要はありません。条件に合う施設を、専門職と一緒に探していきましょう。
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出典・参考
- 厚生労働省「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度(喀痰吸引等制度)」(認定特定行為業務従事者・登録喀痰吸引等事業者・対象行為〔たん吸引・経管栄養〕):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/tannokyuuin/index.html
- 厚生労働省「喀痰吸引等制度の概要」(制度の仕組み・研修・対象範囲):https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/tannokyuuin/dl/tannokyuuin05-31.pdf
まとめ
胃ろう・たん吸引・在宅酸素などの医療的ケアが必要でも、入れる施設はあります。ただし対応できるケアは施設ごとに大きく異なり、カギは看護師の配置(とくに夜間)と、たん吸引・経管栄養を介護職員が行える喀痰吸引等制度の登録の有無です。医療対応に比較的強いのは介護医療院・老健・看護体制の手厚い介護付き有料老人ホームなど。大切なのは、必要なケアの種類・回数・時間帯を具体的に伝え、将来の変化や退去要件まで確認すること。ひとりで抱えず、病院のソーシャルワーカーやケアマネジャー、地域包括支援センターと一緒に探しましょう。施設さがしは、AIアドバイザーにも気軽に相談してください(無料・登録不要)。