「最近、車の傷が増えた気がする」「駐車がうまくいかなくなった」——親の運転に、そんな違和感を覚えたことはありませんか。結論からいうと、75歳以上は免許更新のたびに認知機能検査が義務づけられており、心配なときは運転免許の自主返納という選択肢があります。ただし、この話を切り出すのは家族にとって最も気まずい会話のひとつです。この記事では、制度の仕組みと、角が立たない伝え方、返納後の移動手段の備えを整理します。
75歳以上には「認知機能検査」が義務づけられている
運転免許証の更新期間が満了する日の年齢が75歳以上の方は、更新のたびに認知機能検査を受けなければなりません(警察庁)。
- 検査時期:更新期間満了の6か月前から受検可能。対象者には満了6か月前までに警察から通知が届きます
- 検査内容:①手がかり再生(イラストを記憶し、ヒントなし・ありで回答する記憶力検査)②時間の見当識(検査時点の年月日・曜日・時間を答える検査)の2項目
結果によって、その後の扱いが変わります。
| 検査結果 | その後の流れ |
|---|---|
| 認知症のおそれがない | 通常の更新手続きに進む |
| 認知症のおそれがある | 医師の診断書提出命令、または臨時適性検査 → 認知症と診断されれば聴聞を経て免許の取消し・効力停止 |
つまり、すでに国の制度として「一定の年齢からは運転の適性を定期的に確認する仕組み」があるということです。家族が心配するのは、決して大げさなことではありません。
運転免許の自主返納とは?
認知機能検査の結果を待たずに、本人の意思で先に手放す選択肢が自主返納です。運転が不要になった方や、加齢による身体機能の低下で運転に不安を感じるようになった方が対象で、手続きは各都道府県警察の運転免許センター等で行います(警察庁)。
返納すると「運転経歴証明書」がもらえる
自主返納者は、希望すれば運転経歴証明書の交付を受けられます。平成24年4月1日以降に交付されたものは、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として使えるため、「身分証がなくなって困る」という不安には対応できます。
- 返納から5年以上経過すると交付対象外になるため、返納と同時に申請するのがおすすめ
- 交通違反による免許取消しの場合は対象外
親にどう切り出す?角が立たない伝え方
制度の話より、こちらの方が難しいと感じる方が多いはずです。運転は高齢者にとって自立の象徴・自尊心そのものであることが多く、正面から「危ないからやめて」と言うと反発されがちです。
① 責めずに、心配を伝える
「運転が下手になった」ではなく、「事故が心配だから、一緒に考えたい」という心配ベースの言い方に。本人を否定しない伝え方が、話し合いの土台になります。
② 「事実」を積み重ねる
ヒヤリハット(こすった、ヒヤッとした場面があった)があれば、感情論ではなく事実として伝えます。本人も無自覚なことが多いので、記録しておくと説得材料になります。
③ 代わりの移動手段を、先に用意してから話す
「返納したら、どうやって買い物に行くの?」という不安に先回りして答えを用意しておくことが何より重要です(詳しくは次の章)。
④ 一度で決めようとしない
多くの場合、1回の会話では決まりません。時間をかけて、繰り返し話すことを前提にしましょう。本人の気持ちが動くタイミングを待つことも必要です。
⑤ 家族以外から伝えてもらう
家族の言葉は届きにくくても、地域包括支援センターの職員やかかりつけ医など、第三者からの一言が効くことがあります。健康診断のタイミングで相談してみるのも一つの方法です。
返納後の移動手段をどう確保する?
「移動の足がなくなる」不安を解消できないと、返納の話は前に進みません。
- 自治体のコミュニティバス・乗合タクシー:高齢者向けの割安な運行がある地域も
- 自主返納者への支援制度:タクシー運賃の割引、バス・電車の回数券など、自治体・事業者による支援があります(内容は地域差が大きいため「お住まいの市区町村+運転免許 返納 支援」で確認を)
- 家族の送迎:通院や買い物など、頻度の高い用件だけでも分担できると負担が減ります
- 訪問介護の通院等乗降介助・介護タクシー:要介護認定を受けている場合は、送迎込みの介護保険サービスも選択肢に
- 宅配・移動販売:買い物そのものを家まで届けてもらう手も。生活パターンによっては車以上に楽になることも
「運転をやめる」だけの提案ではなく、「運転をやめても困らない生活」まで一緒に設計することが、話し合いを前に進めるコツです。
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出典・参考
- 警察庁「認知機能検査」(75歳以上の更新時検査の対象・内容・結果による扱い):https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninchi.html
- 警察庁「運転免許証の自主返納・運転経歴証明書」:https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/jishuhennou.html
まとめ
75歳以上には免許更新のたびに認知機能検査が義務づけられており、結果次第では免許の取消し・効力停止もありえます。心配なときの選択肢が自主返納で、返納後は運転経歴証明書が身分証代わりになります。ただし制度以上に難しいのが「親への伝え方」。責めずに心配を伝え、事実を積み重ね、代わりの移動手段を用意してから話す、そして一度で決めようとしない——この順番が、角を立てずに進める近道です。伝え方や移動手段の相談は、AIアドバイザーにも気軽にどうぞ(無料・登録不要)。