夕方になっても、親が帰ってこない。携帯に電話をかけても出ない。近所を一回りしても見当たらない。
「もう少し探してから、警察に」——そう考えた瞬間が、いちばん危ない時間です。
結論からいうと、迷ったら、すぐ110番してください。警察庁の統計では、認知症で行方不明になった人は届出を受けた当日に見つかる人が最も多く、亡くなった方の77.8%は行方不明になった場所から5km圏内で見つかっています。つまり、早く、近くを探すことが命を分けます。この記事では、警察庁の最新データをもとに、最初の1時間にすること、探す場所、そして平常時の備えを整理します。
認知症の行方不明は、どのくらい起きていますか?
警察庁の「令和6年における行方不明者届受理等の状況」によると、2024年に認知症に係る行方不明者は18,121人でした。前年から918人減ったものの、依然として高い水準とされています。
2015年の12,208人から、この10年で約1.5倍に増えています。行方不明者全体(82,563人)の**21.9%**が認知症によるもので、**70歳代では原因の61.8%、80歳以上では77.0%**が認知症です。
⚠️ **「うちの親はまだ大丈夫」と考えている方ほど、読んでおいてください。**行方不明は、初めての1回目が突然起きます。
最初の1時間に、何をすればいいですか?
① すぐに110番する
警察庁の同資料では、届出受理から所在確認までの期間は**「受理当日」が最も多く12,476人**、次いで**「2日〜3日」が4,156人**でした。早く届けた人ほど、早く見つかっています。
「大げさにしたくない」「近所に知られたくない」——その気持ちは分かります。でも見つかったあとで「見つかりました」と連絡すれば済む話です。逆の順番は取り返しがつきません。
② 警察に伝える情報をそろえる
| 伝えること | 例 |
|---|---|
| 最近の顔写真 | スマホの写真で構いません。正面・全身の両方があると強い |
| 服装 | 上着の色、靴、帽子、かばん |
| いなくなった時刻と場所 | 「16時ごろ、自宅」 |
| 持ち物 | 財布・携帯・交通系ICカードを持っているか |
| よく行く場所・昔住んでいた場所 | 以前の職場、実家、よく行ったスーパー |
| 持病・服薬 | 飲み忘れると危ない薬があるか |
③ 家族で手分けして、近くから探す
ただし家族だけで抱えないこと。捜索は警察と並行して行います。
どこから探せばいいですか?
**遠くへ行ったと思い込まないでください。**警察庁は同資料のトピックスで、次のように示しています。
- 2024年中に受理した認知症に係る行方不明者のうち、死亡者は491人
- その77.8%にあたる382人が、行方不明となった場所から5km圏内で死亡確認されている
そして死亡確認場所の内訳はこうです。
| 場所 | 人数 |
|---|---|
| 河川・河川敷 | 115人 |
| 用水路・側溝 | 79人 |
| 山林 | 71人 |
| 田畑 | 44人 |
| 路上 | 37人 |
| 海・海岸 | 31人 |
| 住宅等敷地内 | 30人 |
| 屋内 | 23人 |
**河川・用水路・山林の3つで全体の54.0%**です。警察庁は、これらの場所は人的捜索が困難となる場合も多く、発見の遅延が行方不明者の生命に大きく影響するとしています。
✅ 最初に見る場所
- 自宅から5km以内の水辺(川・河川敷・用水路・側溝・ため池)
- 家の裏手や近所の林・空き地
- いつもの散歩コース、昔の通勤路、以前住んでいた家の方角
⚠️ 側溝や用水路は、大人が落ちると自力で上がれない深さのことがあります。暗くなる前に、足元を照らしながら見てください。
GPSは、本当に役に立ちますか?
役に立ちます。警察庁は同資料で、行方不明者の早期発見・保護のためにはGPS機器等による位置情報の早期把握や、無人航空機(ドローン)による捜索が効果的だと明記しています。
実際の発見事例として、次の3つが紹介されています。
- 自転車に取り付けたGPS機器の位置情報から、届出受理後2時間以内に自宅から約28km離れた他県で発見
- 靴に取り付けたGPS機器の位置情報から、自宅から約500m離れた山中で滑落しているところを発見
- 紛失防止タグの位置情報から、届出受理後約45分で自宅から約70km離れた駅の周辺で発見
💡 ポイントは、本人がいつも身につけるものに付けることです。
- 靴(中敷きの下・かかと)
- 自転車
- いつも持つかばん・杖
「携帯を持たせればいい」は、うまくいかないことが多いです。置いて出かけてしまえば意味がありません。
平常時に、何を準備しておけばいいですか?
いなくなってからでは、間に合わないものがあります。
- 最近の写真を撮っておく(正面・全身。季節が変わるたびに更新)
- 服や靴に名前と連絡先を書く(本人が嫌がる場合は、目立たない内側に)
- 介護保険の福祉用具を使う — **「認知症老人徘徊感知機器」**は福祉用具貸与の対象です。屋外へ出ようとしたときにセンサーが感知して知らせる機器をレンタルできます。ケアマネジャーに相談してください(詳しくは福祉用具レンタル)
- 自治体の事前登録を確認する — 多くの市区町村に、行方不明のおそれがある方の情報を事前に登録しておき、いざというときに地域で協力する仕組みがあります。名称や運用は自治体ごとに違うので、地域包括支援センターで「行方不明に備えた事前登録はありますか」と聞いてみてください
- 近所の人に一言伝えておく — 「見かけたら声をかけてください」。見守りの目は多いほどいい
出ていく親を、どう止めればいいですか?
**力で止めようとしないでください。**本人の中には、出ていく理由があります。「家に帰る」「仕事に行く」「子どもを迎えに行く」——今いる場所が自分の家だと分からなくなっていることもあります。
- 否定しない(「どこにも行かなくていい」は、本人の目的を否定することになります)
- 一緒に少し歩く(数分歩いて気持ちが落ち着いたら、「そろそろ戻ろうか」)
- 夕方に増えるなら、その時間の過ごし方を変える(買い物や散歩を夕方前に一緒に済ませる)
- 急に始まったなら、体調を疑う(痛み、便秘、発熱、薬の変化。主治医に相談してください)
夕方に「帰りたい」と言い出す場合の対応は帰宅願望・夕暮れ症候群、夜に落ち着かない場合は昼夜逆転、声かけの基本は認知症の親への接し方にまとめています。
⚠️ 鍵で閉じ込めるのは、家族だけで抱えていると選びがちな手段ですが、火事や急病のときに逃げられなくなります。そこまで考えるほど追い詰められているなら、ケアマネジャーに相談してください。
在宅の限界を感じたら
ひとり歩きが続くと、家族は夜も眠れなくなります。玄関の音に耳をすませ、少しでも目を離せば心配になる。それを何か月も続けられる人はいません。
**一度でも行方不明になって警察に保護されたなら、それは体制を見直すサインです。**24時間の見守り、施錠や出入口の管理、複数の職員の目——施設はそれを仕組みとして持っています。とくに、少人数で家庭的な環境のグループホームは、認知症の方の暮らしに合わせた住まいです。
判断の目安は在宅介護のコツと限界の見極め方、罪悪感については施設に入れるのは親不孝?と感じたら、施設選びは認知症の方の施設選びへ。
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出典・参考
- 警察庁 生活安全局 人身安全・少年課「令和6年における行方不明者届受理等の状況」(令和7年6月)(行方不明者総数82,563人/原因・動機別で認知症又はその疑いによるもの18,121人・構成比21.9%/年齢層別で認知症の割合は70歳代61.8%・80歳以上77.0%/認知症に係る行方不明者数の推移=平成27年12,208人→令和6年18,121人〔前年比918人減・依然として高い水準〕/男性10,012人〔55.3%〕・女性8,109人〔44.7%〕/届出受理から所在確認までの期間=受理当日12,476人・2日〜3日4,156人/トピックス=令和6年中に受理した認知症に係る行方不明者のうち死亡者491人、その77.8%にあたる382人が行方不明となった場所から5km圏内で死亡確認/死亡確認場所=河川・河川敷115人・用水路・側溝79人・山林71人で全体の54.0%、田畑44人・路上37人・海・海岸31人・住宅等敷地内30人・屋内23人ほか/早期発見・保護のためにはGPS機器等による位置情報の早期把握や無人航空機〔ドローン〕による捜索が効果的/GPS機器等の発見事例=自転車のGPSで約28km先・靴のGPSで約500m先の山中・紛失防止タグで約70km先の駅周辺):https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/R6_yukuefumeishakouhoushiryou2.pdf
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」(福祉用具貸与の対象種目に認知症老人徘徊感知機器を含む):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html
- 厚生労働省「認知症施策」(認知症の理解と地域で支える取り組み・相談先):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
まとめ
認知症の行方不明は、2024年に18,121人。誰の親にも起こり得ます。いなくなったら、迷わずすぐ110番——警察庁の統計では、届出を受けた当日に見つかる人が最も多いのです。探すのは自宅から5km以内、とくに水辺と山林から。亡くなった方の77.8%が5km圏内で見つかり、河川・用水路・山林で54.0%を占めています。平常時には、最近の写真、服や靴への名前と連絡先、そして靴や自転車に付けるGPSを。警察庁もGPSの早期把握を「効果的」と明記しています。介護保険の認知症老人徘徊感知機器や、自治体の事前登録もケアマネジャー・地域包括支援センターに確認してください。出ていく親を力で止めようとせず、一度でも保護されたなら、それは体制を見直すサインです。施設探しや介護の悩みは、AIアドバイザーにも気軽にご相談ください(無料・登録不要)。